Dear ジェジュン

 

あなたのファンサイトであなたの歌についての原稿を募集していました。

私はあなたに手紙を書くことにします。

 

 

 

私が、あなたの歌に初めて出会ったのは、去年の7月でした。
毎晩毎晩、娘から、あなたたちの歌を聞かされていました。眠い目をこすりながら(笑)

 

その中で1人の声だけが、私の記憶の中に残りました。
誰が歌っているのかわからないのに、その人の声だけは、私の心に響いて私を離さないのです。

 

年が明けて、私の車の中では、再び、あなたたちの歌が鳴り響いていました。
その時私は、あの…、

私の心を捉えて離さなかった歌声に再会しました。

それが、あなたとの出会いです。

 

 

あなたの声は、とても不思議ですね。

 

私は、長年、歌に関する仕事をしてきました。
ですから、あなたの歌声を聴けば、そのときのあなたの声の状況は手に取るようにわかります。

風邪気味だったのか、寝不足だったのか…etc.

 

でもあなたは、どんな状況でもそのたぐい稀な発声で歌い上げてきました。

あなたは、きっと人には言えないくらいの努力をして、その伸びやかな発声を身につけてきたのですね。

 

あなたの歌の特徴は、どの音域にも対応できるしっかりとした基礎発声にあります。

あなたの声の素晴らしいところは、高い音域では少しハスキー気味に、そして中音域から低音域にかけては、甘くミルクのような濃厚な響きを奏でるところです。
中音域の声だけを聴いていると、高音域のハスキー気味な発声で歌う人物とは別の人物が歌っているような錯覚に捉われます。

また低音域では、どんなに低く歌いにくいメロディーであっても、かき消されることなく、しっかりとした響きで存在しています。

 

私はたくさんのいろんなジャンルの歌手の声を聞いてきました。
けれども今まで出会った中に、あなたのような発声をする歌手を知りません。

どんなに伸びやかな発声をしている歌手でも、どこか必ず苦手とする音域を持っています。

特に声に自信のある歌手で絶唱型と呼ばれるタイプは、コンサートなど何時間も歌い続けると必ずその人の発声の弱点が出るものです。
けれどもあなたはどんなに歌い続けても、どの音域にも不安を感じたことはありません。

 

ほとんどの歌手は、ある音域になれば必ず喉が詰まったような発声になり、聴き手も「これ以上高い音域は無理だな」と感じます。

ところがあなたの場合、それを感じたことがありません。

あなたにとって高い音域はどこまでもどこまでも広がっているように感じられるほど、どんなに高い音域でもまるで中音域を歌っているかのように伸びていくのです。

そしてあなたの最大の魅力は、ミルクのような濃厚さとビロードのような艶やかさを持つ中音域にあると思います。

多分、あなたは、あなたが持つ音域すべてを歌声として使うことができるテクニックを持っているのですね。

どんなに困難なメロディー展開をしても簡単に歌ってしまう裏側で、あなたがそれを身につけるためにどれだけの時間と努力を費やしてきたのかを想像するとき…

私は、歌の世界に身を置く1人として、只々頭が下がるだけです。

高音域と中音域とを、しっかりとしたテクニックでコントロールするからこそ、あなたの歌は私たちの心を掴んで離さないのだと思います。

 

 

あなたは、韓国でデビューしました。

当然母国語である韓国の歌は、あなたの表現力を最大に発揮します。
「MIROTIC」に入っている「Forgotten Season」は、あなたの得意とするバラード曲で、20年前のリメイクを感じさせないほど新鮮な響きを奏でています。

けれども私は、あなたが最も成長したのは日本語による楽曲だったと思います。

 

日本語は韓国語と違い子音で終わる単語を持ちません。

すべての言葉が母音で終わります。

外国人が日本語を習得するとき、母音で終わる発音に、てこずることが多いです。

また日本語は、歌に最も向かない言語の1つだと言われています。

歌詞をつけるとき、1つの音符に1つの言葉ではなく1つの文字がつくからです。
そのため、テンポの遅いバラード曲などは、ことばがバラバラになるため、日本人でも何を歌っているのかわかりにくいことがあります。

でもあなたは、これらの困難を見事にクリアして歌手として進化しました。

あなた自身が言うように日本語の歌を歌うとき声のポジションが前に出ますね。

ポジションを前に取ることで、あいまいな日本語がはっきりとした発音になります。
そしてそのことによって、あなたは高音域に新しい音色を身につけました。

「細く繊細で、美しい音色」を持った高音域です。

かつてのハスキーな高音域とは全く別の音色を身につけました。

 

「いつだって君に」に使われる音色と「Maze」に使われている音色はあきらかに別のものです。

 

歌手がその言語によって自分の発声ポジションを変えることほど困難なことはありません。

発声ポジションを変えることは、常に喉を傷めるかもしれない危険性をはらんでいます。

その事ができるのは、しっかりとした基礎発声が身についている歌手だけに許されていることなのです。
それを、あなたは見事にクリアーし、さらに今、英語の歌に挑んでいます。
きっとこれから、あなたはもう1つの言語を習得すると同時に新しい発声ポジションを身につけていくのでしょう。

 

またあなたは、韓国語でも日本語でもことばの意味によって声の音色を変える繊細な言語センスを発揮しています。

その能力によってあなたの歌はロックからバラードまであらゆるジャンルの歌を表現することができるのだと思います。

 

 

あなたの歌声に再会した時、私は1人の母親としてどん底にいました。
大学受験に失敗し浪人生活を送っている息子とは、もう何年も前から上手くいっていませんでした。

それは、どこの母親でも持つ息子への大きな期待が彼を苦しめていたのです。

 

毎日がぴんと張りつめていて、重苦しい気分に包まれていました。

 

自分が息子を追い詰めていたのだと気づいたとき、私は母親としても人間としても生きる自信を失っていました。

私にとって歌の仕事をしているときだけが心の支えでした。

そんなとき、あなたの歌に再会したのです。

 

長年、歌の仕事をしてきて、沢山の方から「音楽で心が癒されました」と聞いても自分の体験の中にそれはありませんでした。

なぜなら私にとって歌は仕事だったからです。

でもあなたの歌に出会って、私は初めて「人は、音楽で心が癒される」ということを体験しました。

 

あなたの歌声を聴いて涙が出ました。
あなたの声は優しかった。

 

あなたの歌をむさぼるように聞きました。

あなたの声が聞こえることが私の支えでした。

それは、今も変わりません。

私は、あなたの歌によって生き返りました。

 

今、私はあなたに「もっと自信を持って!」と言いたいです。

 

あなたは本当にやさしい。

その優しさが、歌にあふれていて私たちの心を打ちます。

いつも私たちの心に、いつのまにか、そっと寄り添って一緒に歩いてくれるのです。

 

でも時にはその優しさゆえに自己主張の激しいものにかき消されそうになります。

あなたの歌はしっかり存在しているのに、あなたの優しい遠慮がちな心が歌の存在をかき消しそうになるのです。

 

誰にも遠慮しないで、もっと自信を持って主張して下さい。

 

あなたの韓国語の歌

あなたの日本語の歌

そして、これから始まる英語の歌

 

どの曲を歌ってもあなたの歌の本質は変わりません。

キム・ジェジュン という1人のアーティストの作り出す世界は、あなただけが表現できる世界です。

 

 

どうか、覚えていてください。

あなたの歌は私たちにとってかけがえのないもの。

あなたの歌によって多くの人が救われていることを。

 

そして、あなたが

あなた自身を愛するより深くあなたのことを愛している人がいることを。

 

あなたの声は宝物。

世界にたった1つしかない、かけがえのない宝物です。

 

どうか、喉を大切にしてくださいね。

あなたが歌う場所に、私は必ずいます。

 

2010.10.14