最初は白紙の地図だった。
日本という国は真っ白。
何の色も塗られていなかった。

韓国で、最も韓国的な発声をし、最も韓国的な容貌を持つものが、日本の地図を自分の色に染め抜くはずだった。
韓国の色、韓国の発声、韓国の歌い方。
そのまま持ち込めば大丈夫なはずだった。
なぜって、韓国ではデビューして一気にトップの地位に駆け上がったのだから。
そのまま持ち込めばいい。
日本を韓国の色に染め抜けるはずだった。

しかし日本の地図は、韓国の色を拒否した。
どんなに韓国の色を塗っても、頑として白いままだった。
白い地図は、まるで韓国の色を拒否するかのように依然白いままだ。
それは、日本には日本の音楽があり、日本の市場があり、日本のやり方があるという事を表しているかのようだった。

日本でブレイクするためには、極力、韓国の色を消し、日本の歌い方、日本の歌声、日本の容貌、スタイルを取り入れなければ、存在さえ認めて貰えなかった。

最も韓国人から遠い容貌を持ち、
最も韓国人らしからぬ声質を持ち、
グループの中で最も学歴もなく、日本語の習得も一番遅く、何の後ろ盾もない人間が、抜擢された。
それは、グループを韓国の色から、日本の色に塗り替える手段のようでもあった。
グループの名前も日本式の呼称に変え、徹底的に日本の音楽を取り入れた。
日本語で歌い、日本のスタイルを取り入れ、言われなければわからないほど、徹底的に日本の色に塗り替えた。
そして、ブレイクした。

日本という場所は、決して他の色に染め抜かれない。
日本特有の強さとしなやかさを持つ市場は、日本に最も馴染んだ彼の色に染め抜かれた。

その市場を韓国の色に染め変えること。
韓国の音楽を持ち込み、韓国方式の歌を歌い、韓国人であることを誇示すること。

日本の色に馴染んだ彼の色から、韓国の色に塗り替えること。
5人時代の日本色を消し去り、彼の色を消し、韓国色を施した3人グループの色を浸透させること。
それが目的だったのか。
彼の色を徹底的に排除し、韓国の色に塗り替える。

韓国式で日本市場を管理する。
韓国式の戦略を浸透させる。
韓国式の考えや思想を持ち込む。

あくまでも韓国が上であり、韓国の事務所が日本市場を管理運営すること。
莫大な日本市場を持ち、日本に馴染んだ彼から、その場所を奪い取ること。
彼に歌う場所を与えず、日本での彼の存在を消し去る事。
それが最大の目的だったはずだ。

そうしなければ、日本の地図を韓国の色に塗り替えることは出来ない。
その為の5年だったはずだ。

5年たった今、
日本の地図は、彼らの目的通り、韓国の色に染め抜かれたのだろうか。

日本の事務所を悪者に仕立て上げ、彼との縁を切らせた。
弱者の振りをして、同情を買った。
外部妨害をアピールして、韓国の組織を少しずつ浸透させ、日本人を取り込んだ。
日本での歌手としての市場を奪うために、歌手活動は出来ないと周知徹底し、日本から最も遠い場所である俳優活動だけを与えた。
ファンから遠ざけること。
日本から遠ざけること。
そうやって、彼から日本を奪い取ること。歌手としての場所を奪い取ることが、自分達の色に日本の地図を塗り替えることになると思ったのか。

それなのに、彼の色は日本から消えなかった。

どんなに韓国の色を塗りこんでも、たった一度で、彼の色に染まり抜いてしまう日本。
どれだけ排除しても、彼の色を消し去ることが出来ない。

日本には日本に馴染む色がある。
日本がどの色を選ぶのかは、日本が決める。
誰を選ぶのかも日本が決めるのだ。

彼が戻ってきたとき、彼の前には、何色の地図が用意されているだろう。