Tatooが本物であるとわかったと同時に軍フェスの不参加がどうも決定的だということがわかり、ああ、こういうことだったのかと思った。
やられた、と正直思った。

除隊まであと数ヶ月。今までどんなに身体を切り刻んでも、決して見える場所にTatooを入れて来なかったのは、彼なりの不文律があったから。それをあえて自分で破ったのには、それだけの覚悟とどんな時も決して忘れないという強い意思の現れとしか考えられない。
なぜなら、どんなに目に見えるところに入れるとしても、今までの彼ならおそらく腕の内側に入れただろうと思うからだ。それをあえてあの場所に入れたのには、必ず理由がある。
何をしても見える場所。誰からも見える場所。そしてこの時期を忘れない為。
彼のTatooには必ず意味がある。今まで刻んできたものは、どれも自分への戒めだ。決して忘れない為に刻んだと彼は言ってきた。そして、刻み込む時期にも今まで一様に意味があった。

今回、刻み込んだサインは、「Peace(平和)」。
それは、裏返せば、軍隊にいて尚、自分の心が平安に保てないということの裏返し。
入隊中に入れなければ耐えられないほどのことがあったという証拠なのかもしれない。

除隊前には、いろいろな準備があって軍フェスには出ないという情報が一部にあるが、そんな決まりはないはずだ。もし、あるとするなら、昨年の軍フェスで彼と共に共演した上官サンウ氏の出演の説明がつかない。サンウ氏は、11月の除隊。除隊直前での出演だ。
彼は、去年の軍フェスの直後、「また、来年、軍フェスで会おう!」と言っている。そんな決まりがあれば、次の軍フェスに出れないことは当然知っていて、そんなコメントを出すはずがない。
こういう情報が出ると必ず揺り戻しが起きる。
「心配しなくていい」
「除隊前には準備で出ないことが多い」
「日光アレルギーになるよりマシ」
「去年はファンがたくさん行って警備が大変だったから」
そんな理由で満足出来るなら、彼は自分の腕を切り刻まない。
「韓国ではタトゥーは、もっとファンション性があって、そんなに騒ぐことではない」
もし、そうであるなら、今までの彼のタトゥーは全て彼のファッションなのか。
彼が自分のタトゥーについて何を話しているのか、知らないのだろうか……

軍隊生活は信じられないほど安穏だった。
「誰も守ってくれない」と泣いたほど心配して入った軍隊で、彼は歌手としての本領を発揮した。
基礎訓練を持ち前の体力と精神力、そして人間性で優秀な成績で終了した。
それは、何の冠も鎧も脱ぎ捨てたキム・ジェジュンという一人の素の存在に対する公平、かつ正当な評価だった。
基礎訓練が終了した途端、彼は二等兵の分際でステージに引っ張り出された。初めての軍隊でのステージで、彼は最初こそ遠慮がちに歌い始めたが、曲が終わる頃にはすっかり歌手としての顔を取り戻していた。
それからは、あれだけ心配したことが嘘のような状況になった。
軍務をきちんとこなし、人望も厚く、歌手としての力量もある彼を軍隊は重用した。
ステージには引っ張りだこになり。軍隊の大きなフェスティバルでは彼の独壇場になるほどの活躍を見せた。
除隊まであと数ヶ月。上等兵から7ヶ月後の9月には兵長に昇進する。
上官になって最後の大きな軍フェスに出演し、軍人歌手ジェジュンとしての集大成を見せるだけという状況にあった。
本人も周囲も期待したその集大成の機会を潰した。
潰さなければならない事情は何だったのか。
潰したかった人物は誰なのか。
軍隊にいて守られているとばかり思っていた。それが間違いだったと気づかされた。

軍隊では信じられないぐらい順調だった。
本当に彼は軍隊にいるのだろうか、と思うほどこの6年間で一番歌う機会を与えられた。
多くの人が彼の歌手としての力量とパフォーマンスに魅了された。
軍服を除けば、そこには紛れも無く歌手ジェジュンがいた。
これほど輝く彼を見たことがないというほど、歌手ジェジュンは輝いていた。
伸びのある声量を武器に、歌手としての実力をいかんなく発揮したのだ。

歌手は歌えば歌うほど、上手くなる。
歌う機会が歌手を成長させる。
とくに彼は歌いこめば歌い込むほど、伸びるタイプの歌手だ。
入隊までの彼には、殆ど歌う場所を与えられなかった。
2013年の1年間、僅かに歌手活動をしただけだ。
そんな彼が軍隊に入って輝いた。
歌手としての自分を取り戻し、内外の人間に強烈にその存在をアピールした。
入隊中であるにも関わらず、日本の週刊誌に写真の特集記事を何度も組まれるほど露出した。
今までこれほどに入隊中に記事になった芸能人がいただろうか。日本では記憶にない。それほどに彼は絵になった。
軍隊の中で彼は歌声を取り戻し、輝くような笑顔を取り戻した。
歌手ジェジュンは、再生したのだ。
一番の収穫は、彼自身が歌手としての勘を取り戻したことだろう。
そして多くの兵士に歌手としての存在を強烈に印象づけた。
東方神起を離脱後、殆ど見る機会さえなかった一般人に、歌手としての存在と実力を見せつけ、印象づけた。
東方神起のジェジュンとしての認識しかなく、JYJという単語がどこからも聞こえてこないほど、韓国の一般社会での認知度は、「元東方神起のジェジュン」なのだ。
これが、現実であって、如何にJYJというグループが特殊な存在であるか、認知度が低いのかということを露呈した。

彼は、歌声を取り戻し、歌うことの喜びを取り戻した。
誰もが除隊後の彼の歌手としての活躍を信じて疑わない状況だった。
彼にとっての軍隊生活は、歌手としての再生と自覚を取り戻す為の二年だったと言っても過言ではない。
その最後の大きな軍フェスに参加しない理由は、彼の中にはない。
では、誰のどんな理由なら、あるというのか。

去年の軍フェス、そしてこの春に行われた軍港フェスティバルにもあるように、それはSMとの関係においてでないことは明白だ。
なぜなら、SMからの横槍によって彼が出演出来ないのであれば、当然、軍港フェスティバルでの出演やSJとの共演はなかったからだ。
SJのメンバーとの共演は一度ではない。もし、問題にあるのであれば、二度とないはずだ。けれども複数回、共演し、SJの3人と彼の4人でグループ的活動をさせるほど、行動を共にさせている。この5月の慰問公演までは、順調だったのだ。
彼の姿は、6月のテ・ジナ氏の慰問公演での共演を最後に情報がプツリと途絶えた。
それが何を意味するかだ。

Cjesという事務所は、誰の為の事務所なのか、もう誰もが承知だろう。
あの人の事件以来、誰もがハッキリ悟ったのだ。
どんなに役員に名を連ねても、どんなに大株主であっても、Cjesに逆らえば、例外ではないという事を。

あれほど可愛がって育ててきたあの人が、あれだけのことをされる理由が何だったのか、私にはわからない。
しかし、あの人は当分、芸能人としては使い物にならない。韓国では不可能に近い。そして、人気のあった日本においても、あれだけのマイナス要素の事件の当事者であるあの人のイベントを引き受ける会社があるだろうか。
おそらくまともなところはどこも手を出さないだろう。
そうなれば、在日関係の胡散臭いプロモーターが取り仕切ることになる。

今まであの人のイベントは、全て韓流関係の放送局が取り仕切ってきた。まともな会社のまともなイベントだったのだ。
あれだけ一般週刊誌にも書かれ、ネットニュースにもなった。
今、起訴されている嫌疑の審議が決定されたら、再びニュースになることは間違いない。
どんなに嫌疑が晴れたとしても、一端失ったイメージは、回復不可能だ。
もう何もなかった頃には、二度と戻れない。
俳優として致命的な傷を負ったとも言える。
もうあの人には、清廉潔白な主人公や、一途な愛を求める役柄は決して来ない。
俳優として限定された役柄になるかもしれない。
それよりも、あれだけ世間を騒がせた事件の張本人を、どこが最初に放送に復帰させるかだ。その勇気のあるところはどこなのかという問題になる。

あの人は、今回のことで、一生償っても償いきれないほどの恩義を事務所から受けたのだ。
事務所の背後にある黒い力を登場させてまで、事務所は問題の解決を図ろうとした。それは、裏返せば、それほどの権力を使ってでも、あの人を事務所から出さない、という強い意思の現れだ。
事務所が盾になって守ったというあの人への強烈な意思表示。
その代償は大きい。
あの人はおそらく一生、Cjesから独立することは不可能だろう。そして、当分は言いなりになるほかない。
仕方ない、もとはと言えば、自分で撒いた種なのだ。
火のないところに煙は立たない。
おそらく今回のことが初めてではないということは、簡単に想像がつく。
今までも何度も事務所は煮え湯を飲まされ、そのたびに火消ししてきたのかもしれない。何度もスキャンダルの火種はあったのだから。

仮に今回、事務所が後手、後手に回った結果、表沙汰になったのだったとしても、それはそれで事務所的には好都合だったのかもしれない。
これで大きな足枷をあの人に嵌めることが出来ると同時に、益々イチオシ歌手のスキャンダルも誤魔化せる。
マイナス要素は全て潰しておかなければならないのだ。
なぜなら……

なぜなら、この秋、事務所にとってもイチオシ歌手にとっても命運をかけたミュージカルの大作公演があるからだ。
全ての話題は、ここに集中させなくてはならない。
入隊前の最大かつ最後の巨大プロジェクトなのだから。
来年以降もCjesカルチャーが機能するために必要な社運を懸けたプロジェクトであることは間違いないのだ。

「メンバーの活動は被らないようにしている」

軍フェスの話題に大事なドリアングレイがかき消されては困るのだ。
その期間は静かにしていてもらわなければ困る。
これから来年の前半にかけて、イチオシ歌手にとっても事務所にとっても大事な時期なのだ。
雑音となる懸念は、全て潰しておかなくてはならない。

ジェジュンの入隊中、問題はなかったのか。
順調に見える入隊期間だが、大きな出来事があった。
それは、去年の軍フェス直後の出来事だ。
国旗ワッペン事件は、サセンと共に決して忘れることのできない事件とも言える。
強烈な事務所の揺さぶり。
ジェジュン一色に染まった軍フェスのあと、事務所の配下にあるのだということ、自由ではないのだということ、たとえ軍隊にいても事務所の力は及ぶのだということ。
事務所という強烈な楔を打つことを忘れなかった。
軍務中の彼を呼び出し、わざわざJYJとして表彰式に出演させ、その場所で彼の不手際を仕組んだ。
そう仕組まれたのだ。
いい気になるな、お前は一体どういう身分なのだ。自分をわきまえろ。
事務所の楔を強烈に打ち込んだ。

彼の表情は凍りつき、しばらく笑顔がなかった。
信頼し、可愛がっていた最も身近の人間に裏切られたことは、メンバーからの仕打ちよりも彼の心をズタズタにしただろう。
周囲の人間は誰も信用出来ない。
自分は一人なのだ、ということを思い知らされたことだろう。
それ以降、彼は事務所の人間との場所で笑顔を見せなくなった。
表情は常に固く、誰が見ても緊張が見て取れた。
事務所の人間に心を許していないことがまるわかりになった。
そして、4月の軍港フェスティバル以降、彼のイベントに事務所の人間が立ち会わなくなった。
そうやって彼自身も私達も油断していたのだ。
いや、存在を忘れていた。
なぜなら、事務所はあの人の火消しに躍起となっていたからだ。

あの人の事件後、彼はさらに警戒するようになった。
事務所の人間とは会わない。
一般人とは写真を撮らなくなり、自分の画像を徹底的に管理した。
つけこまれる隙を作らないようにした。
休日もなるべく軍隊周辺にいて、事務所から距離を取った。

嵌めたくても嵌めれない状況になった。
けれど、そのまま手をこまねいているような事務所ではなかった。
この状況の中で、一気に潰しにかかる。
入隊中に事務所の存在を知らしめ、除隊後も、事務所からの離脱を阻止しようとする。

今、事務所が最も警戒するのは、彼の独立だからだ。
今までメンバーの絆、JYJという大きな足枷を嵌めることで、成功していた楔は、あの人のスキャンダルによって、JYJそのものの存続さえ危うい。
ましてや、イチオシ歌手は、ソロ活動に邁進中で、ハッキリ言って、JYJの存在そのものに左右されない。
ファンの彼の独立への期待と、日本活動への期待が高まっていることを知らないハズはない。
それを阻止し、徹底的に潰すのは、入隊中の方が好都合なのかもしれない。

彼への仕打ちは、除隊後だとばかり思っていた。
けれども水面下で着々とジェジュン潰しは進行していたのだ。
彼の気持ちを凍りつかせる。
彼の気分をくじく。
彼の歌手としての露出を徹底的に潰すことは、お手の物だった。

また彼は闇の中に落とされた。
軍隊と言えども、安住の地ではないということを今回、思い知らされた。

除隊後の準備があると言うのは口実に過ぎない。
除隊前に出る、出ないは本人の意思に任されている。
軍フェスだけでなく、他のイベントへの出演も必ず本人への打診があるはずだ。ファンと会える機会を彼が自ら断ることは考えられない。
今までもどんなに忙しくてもファンとの機会、歌える機会は、何とかしてきた彼だ。
彼が出ると言っても出れない唯一の理由は、事務所からの横槍でしかない。
彼を出さない為の口実として、除隊後の準備に忙しいと事務所が難色を示せば、軍は引かざるを得ない。それが本人への打診の前に事務所からの申し出があればなおさら、本人には打診すらないかもしれない。
今までのやり方を見ていればわかる。

除隊後、彼の歌声は封じ込まれる。
どんな交換条件を用意して、ステージに立たせるのか。
そのやり方は、注視する必要がある。
もう同じ過ちは繰り返さない。
彼が、ファンに心配をかけまいと事務所の言いなりになり、JYJ押し、仲良しこよし、そして、俳優に転じていく姿を、彼の意思だと受け止める時期は終わった。
彼は今までも何度もサインを示してきた。
言えない状況の中で、できる限りの抵抗とシグナルを発信してきたのだ。
それをどう受け止めるかは、こちら側の問題だ。

また、駆け引きと闘いの世界に引き戻される。
それだけは確かだ。

除隊までの期間、彼の歌声は聴けないかもしれない。
もう二度とあの豊かな歌声に出会う機会はないのだろうか……